村上歯科医院症例集

(8)歯周治療

おなじみの村上歯科医院の治療例です。
今回は歯周治療の症例です。
歯科関係者の皆様も一般の方も、どうぞご覧ください。

患者様は61歳の女性です。
歯がグラグラしていて噛み合わせると痛いと言うことでご来院されました。

治療経過

H15.4 治療前

口腔内全体に歯肉の発赤は認められますが、歯肉は繊維性で
レントゲン像や歯周精密検査結果ほど重症度は感じられませんでした。
臼歯部の多くが欠損しており、多くに補綴処置が施されていることから、咬合の低下が予測されました。

H16.9 治療後

1年5ヶ月かけて全顎的に歯周治療と補綴治療を行いました。
義歯はI-Bar Dentuerで対応しました。
健康的な歯周組織が獲得され、咬合も安定しているように推察されます。
この治療法について詳しくご説明いたします。
(なお、この症例は日本歯科評論2008年1月号の
私の論文「患者様が真に望む歯科医療の実践」の中に掲載されています)

まず初診時の全顎レントゲン写真と歯周精密検査表をご覧ください。
口腔内写真から想像するよりもはるかに重症の歯周疾患に罹患していることが
お分かりいただけることと思います。


5ミリ以上の歯周ポケットが68.3%存在し、BOP(プロービング時の出血)が91.7%。
多くの歯牙に2ないし3度の動揺が認められました。
まず最初にプラークのコントロールを患者様自身で行って頂けるようブラッシング指導を行い、
同時に来院のたびに術者みがきにより口腔を清潔にする習慣を身につけて頂きました。
患者様は私や担当の歯科衛生士の指導に積極的にご協力くださり、
見る見るうちに健康な歯周組織を取り戻していきました。
医院サイドでは比較的動揺の少ない歯牙で患者様に食事をして頂きながら、
保存不可能な歯牙の抜歯と最小限の歯牙にオープンフラップデブライドメントを行い、
その他の歯牙には浸麻下でのSRPを行っていきました。

重症だが重要なキートゥースであった右下4番は、
歯周外科手術前後には咬合に参加させずフリーに保ち、
自然提出を待った後に暫間的に固定を行い、仮義歯の鈎歯としました。

左上1番は保存することが不可能と思われていましたが、
仮義歯の下で安静状態を保ったことと患者様の熱心なプラークコントロールにより
奇跡的に保存することが可能になりました。

初診より10ヶ月後

初期段階の仮の義歯が入っています。

初診より1年後

最終補綴物を想定した形態のプロビジョナルレストレーションが装着されています。
この頃になると歯周組織も健康状態に回復し、
仮の義歯で噛み合わせが十分できるかどうか観察していきます。

初診より1年5ヶ月 最終補綴物装着時

右上の犬歯が左上の犬歯より長いのは、
審美性を重視し咬合平面を口唇の線に合わせているからです。

最終義歯を装着

歯周組織の健康がよみがえっています。



右の写真が義歯を入れた状態です。

H16.8 治療完了時の全顎レントゲン写真

歯槽骨吸収が改善され、歯槽頂線が平坦化されているのが確認できます。

H16.8 治療完了時の歯周精密検査表

歯周ポケットは全て3ミリ以内で、初診時に91.7%あったBOPも4.2%にまで減少し、
歯牙の動揺も収束し、歯周組織の健康が回復したことを物語っています。

この症例から言えることは、いかに患者様のセルフケアという協力が重要であるかと言うことです。
我々医療者側だけが頑張ってもこのような結果は絶対に得られないと言っても過言ではありません。
また、この良好な結果を維持していくには定期的な検診が欠かせません。
患者様のセルフケアとともに医院側のプロフェッショナルケアがあいまって
初めて口腔の健康が長い間維持されるのです。
この患者様は治療終了後、ご主人(当院の患者様です)と一緒に
3ヶ月に一度、必ず定期検診(メインテナンス)に来院くださっています。
そしてお口の健康を取り戻した喜びをスタッフと一緒に噛み締めておられます。

この患者様からのアンケート

長い間悩んでいました歯と歯ぐきが、これ程までにきれいになったなんてとても嬉しいです。
高度な技術と時間をかけての親切に丁寧な治療をしていただき、心より感謝しています。
先生方、衛生士さん、受付の方、皆様いつもにこやかでやさしくて安心して通院できました。1年5ヶ月、ありがとうございました。
きれいにしていただきましたので一生懸命ハミガキがんばって、この状態を維持しようと思います。
これからもよろしくお願いします。

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