村上歯科医院症例集

(14)歯周治療

村上歯科医院治療例(13)に引き続き当院の治療例を掲載しますが、
今回は久しぶりに「歯周治療」の治療例です。
かなり重症の歯周病患者様でしたが、患者様のご努力で健康な歯周組織を取り戻された治療例です。
歯科関係者の皆様も一般の方も、どうぞご覧ください。

 

患者様は56才の男性です。
当院の患者様のご紹介でしたが、その患者様が門徒のお寺の住職さんでした。

 

  • BEFORE

  • AFTER
    (初診から1年10ヶ月)

治療経過

治療前

歯頸部全体にプラークの付着が認められ、歯周組織からの排膿、出血が著しく、
ほとんどの歯牙にM3の動揺が認められた。

治療後

健康な歯周組織がよみがえっている。

初診時のレントゲン写真

根尖部付近まで至る骨欠損を有する歯牙が多く存在し、
数本の歯牙は抜歯を余儀なくされた。

初診時の歯周精密検査表

BOPは93.6%、5mm以上の歯周ポケットが71.2%という重度の歯周病患者様でした。


  • 初診から2ヶ月

  • 初診から5ヶ月

徹底したプラークコントロール(炎症のコントロール)と咬合調整による力のコントロールを行っていった。
5ヶ月後には歯肉の炎症が消退し、歯肉の退縮が認められる。
この時点ではまだ歯周外科は行っていない。

歯周外科時(オープンフラップ・デブライドメント)

口腔全体にわたり歯周外科を行っていった。

治療終了時(初診から1年10ヶ月)

前歯部の審美性には問題は残るが(これだけの重症の歯牙を残したのだから仕方がないと思うが)、
なるべく歯牙を削らずに健康な歯周組織を取り戻せたのではないかと思う。

治療終了時のレントゲン写真

前歯レントゲンの比較

治療終了時の歯周精密検査表

5mmのポケットが2カ所残ったものの、BOPも7.0%まで下がり、
歯周組織も健康を取り戻している。

初診から8年後のメインテナンス時

歯肉の退縮は見られるものの、歯周組織は健康を維持している。

考察

このような重度の歯周病を治療するには、
まずは徹底的なプラークコントロールなくしては治療は始まらないと言うことです。
それも術者によるものではなく患者様自身によるセルフケアが最も重要なのです。
それをしていただけるように促すことも我々医療者の大事な技術だと考えます。
(これは患者様の治療の度に、毎回「術者みがき」をしてあげることです。
そうすることでほとんどの患者様が上手にセルフケア出来るようになります。)
そのプラークコントロールの効果を上げるために
咬合調整(あるいは暫間固定)による力のコントロールが重要になってきます。
これらのことができた後、再評価検査を行い、必要ならば歯周外科に移行して行きますが、
その頃には最終的な補綴設計の概要をおぼろげながらでもイメージすることが重要です。
それによって抜歯してもよい歯牙か、
どんなことがあっても絶対に保存しなくてはならない歯牙かが決まってきます。
そのイメージを煮詰めつつ歯周組織の更なる成熟を待つ
(ただ待つだけではなく、徹底的な術者によるプラークコントロールを続けていく)のです。
そうすることにより歯牙の動揺も減少し、補綴の設計が容易になります。
その後、できるだけ侵襲の少ない(歯を削らない)補綴の設計を考慮し、補綴に移行して行きます。
侵襲が少ないと言う意味で、私はいろいろと複雑な歯周外科は行わず、
オープンフラップデブライドメントが中心です。
それで十分だとは言いませんが、セルフケアが徹底されていれば
かなりの(ほとんどの)症例で問題はありません。

何はともあれ、この症例での成功の鍵は「患者様によるセルフケアの素晴らしさ」に
よるものであったことは言うまでもありません。
一生懸命に歯のお手入れを続けてくださる患者様に心より感謝いたします。

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