今回の村上歯科医院症例集のテーマは、前回に引き続き(前回は歯牙再植でしたが)歯牙移植です。
初診から19年(歯牙移植から18年)経過した症例です。
歯科関係者の皆様も一般の方も、どうぞご覧ください。
患者様は初診時50歳の女性です。
左下7番が保存不可能でしたので、その奥の8番を7番の位置に移植しました。
保存不可能な7番を抜歯し、8番を7番の位置に移植
歯牙移植から18年近く経過してくると、4番と5番のコンタクトの離開や6番のポンティック下のドゥル、
移植歯歯頸部の二次齲蝕などの問題が発生してきた。
これらの原因は移植歯のアンキローシスによるものであると推察出来る。
現在は6番のポンティックを除去し経過観察中である。
以下、19年間の軌跡を示す。
右上3番が二次齲蝕で失われインプラントに変わり、右下6番が歯根破折で失われ、
6番と7番にインプラントが埋入されていますが、移植歯を含めその他の歯牙は保存されています。
初診から19年(歯牙移植から18年)経過した症例を供覧した。
左下7番部に移植された左下8番は18年経過し歯牙と歯槽骨の境界が不明瞭になり
アンキローシス状態となったが、幸い歯牙は保存されている。
しかし、アンキローシスのため他の歯牙の変化(移動)に取り残されたかたちで様々な問題を発生させた。
18年間残存しているという意味ではこの移植は成功と言えるかも知れないが、
アンキローシスを起こしていることを考えるとこれは成功とは言えないと考える。
いずれにしても現在インプラント治療がかなりの確立で成功していることを鑑みて、
規格化され骨の削除量が少ないインプラント治療に比べるとアバウトな骨の削除量を必要とする歯牙移植は、
経済性の優位を考慮に入れても、歯牙移植という選択肢は縮小されてしかるべきと考える。
なお、数ヶ月前に私の所属する北九州歯学研究会で歯牙移植をテーマに討議が行われたが、
若い年代の会員は歯根膜を大切にする歯牙移植の肯定派だったが、
年齢が上のベテラン会員は歯牙移植に否定的な方が多かった。
いずれにしても、歯牙移植という術式は、技術的センシビリティーが要求される
かなり難易度の高い治療術式であることは否定できない。