村上歯科医院治療例の9症例目です。
今回は矯正治療の症例です。
歯科関係者の皆様も一般の方も、どうぞご覧ください。
患者様は15歳の男性です。
左上の犬歯が近心に傾斜し埋伏しています。乳犬歯の晩期残存が見られます。
乳犬歯を抜歯し矯正治療を行った結果、犬歯が正しく萠出しています。
この症例の治療経過を詳しく紹介いたします。
左上の犬歯のあるべき部分に左下の犬歯が入り込んだ状態です。
この状態から矯正治療を開始しました。
まず、口蓋の歯肉を剥離し埋伏している犬歯の先端にリンガルボタンを接着、
上顎の切歯から小臼歯にかけてワイヤーを接着し、パワーチェーンで犬歯を牽引しました。
犬歯が近心傾斜していたため、アップライトをさせるため犬歯を遠心方向に牽引しました。
犬歯が頭を出してきて下顎の犬歯と干渉し始めました。
下顎の犬歯の切端を少し短く修正し、下顎にスプリントを装着、咬合を挙上した状態で牽引を続けました。
犬歯がかなり頭を出してきたので、今度は犬歯を頬側へ移動するために
リンガルボタンの位置を犬歯の舌側へ移動しパワーチェーンを位置も考慮しました。
かなり犬歯が頬側に移動しています。
上顎犬歯が下顎犬歯を超えたところでスプリントを外し、
その後後戻りしないことを確認した後に矯正装置も外し、動的な保定に移行しました。
実際の動的治療期間(矯正装置使用期間)は約5ヶ月でした。
治療前に比べ治療後は自然な歯列が確保されています。
治療後は犬歯が正直しているのが認められます。
この治療のポイントは、埋伏していた犬歯の位置の診断と、口蓋歯肉の剥離手術。
そして咬合の挙上により犬歯の移動をスムーズにしたことだと思います。
犬歯がジャンプしてしまえば、あとは患者の咀嚼運動による動的保定に委ねるだけでよいのです。
この症例のように犬歯が埋伏状態のまま成人となり、
結局上顎234のブリッジとなってしまった患者様をよく見かけます。
本当に悲惨と言うしかありません。
この患者様の場合も私自身かなり悩んだ末に
(自信があった訳ではありませんが)患者様の将来を考え断行しました。
結果は良かったのでホッとしているところですが、
234のブリッジになることを考えると、この決断も許されると思います。