またまた大変久し振りの村上歯科医院症例集です。
前回から1年半近く経ってしまったのではないでしょうか。
今回は歯牙再植症例ですが、初診から13年の経過後に抜歯に至った症例です。
歯科関係者の皆様も一般の方も、どうぞご覧ください。
患者様は初診時9歳の児童でした。
プールの滑り台で前歯を打って、右上1番が脱落されました。
患者様のお父様は事故後、息子さんを行きつけの歯科医院に連れて行きましたが、
そこでは再植手術は無理と言われ、当院へ転医してこられました。
当院へ来院された時点で、既に事故(歯牙脱落)から数時間経過していました。
歯牙の脱落後、時間が経過し過ぎていたため、成功する確率が低いことをお父様にお話し、
ご了解いただいた上で再植手術を行いました。
再植後の経過を口腔内写真とレントゲン写真で追っていきましょう。
再植手術後1年間くらいは問題なく推移していましたが、
それ以降は徐々に右上1番が低位になってきました。
これは再植歯が歯槽骨と癒着し始めていることを伺わせます。
その傾向は3年を過ぎた頃から顕著になって来ました。
数年来院が途絶えた後、8年後に来られた時には左右1番のギャップがひどくなっていましたので、
この時点でコンポジットレジンで右上1番の切端部分を盛り足して急場をしのぎました。
レントゲン写真からも1年過ぎた頃から歯根の吸収が始まり、
11年過ぎた頃には歯根はガッタパーチャ根充剤だけになっています。
13年後には歯牙も動揺を始めましたので抜歯をしましたが、
その時点で右上2番が近心移動してきていましたのでそのまま経過観察し、審美的に訴えがあれば、
右上2番の歯軸を整えた上で、2番を中切歯の形態に修復しようと考えています。
結果から考えると再植をしたことが良かったのか否か悩むところですが、
患者様が9歳の時点でこのようなディスクレパンシーを予測するのは無理でしたし、
結果的にはそれほど大変なことになっていませんので、これで良しとしたいと思います。