村上歯科医院治療例(18)に引き続き当院の治療例を掲載します。
今回は久しぶりに「歯周治療」の治療例です。
これは当院歯科衛生士で日本歯周病学会認定歯科衛生士の脇田(旧姓:逸木)が
今年11月17日に熊本市で行われた日本歯周病学会第6回九州地区研修会で
ポスター発表させていただいたものです。
重症の歯周病患者様でしたが、非外科療法で健康な歯周組織を取り戻した治療例です。
歯科関係者の皆様も一般の方も、どうぞご覧ください。
患者様は64才の女性です。
左下の歯が抜けそうということで来院されました。
歯周基本治療において最も重要なのは患者自身の病態認識とセルフケア技術の向上であるが、
セルフケア技術の向上と維持において苦慮しながらも、
非外科療法で重度慢性歯周炎の改善がみられ、SPTに移行した症例を報告する。
歯槽骨の状態は全顎的に水平性の骨吸収があり、16、17、26、47には垂直性の骨吸収が認められた。
また縁下歯石の付着もあり、ほとんどの部位でBOP(+)(76.0%)である。
広汎型重度慢性歯周炎。
初診時から知覚過敏症状が出ていたため積極的なスケーリングやSRPに取りかかれず、
ブラッシングを中心に約半年間様子を見ていった。
知覚過敏は軽い症状が2〜3年続き、下顎前歯部はその後も長引いたが、現在は落ち着いている。
患者さんのモチベーションの維持とセルフケアの確立を常に意識しながら、
口腔清掃指導、スケーリング、ルートプレーニングを行った。
気をつけた点はなかなか定着しないセルフケアに対して、
患者さんの生活背景やモチベーションを確認しながら
毎回部分的な口腔清掃指導を積み重ねていった点である。
特に苦手とされた舌・口蓋側のセルフケアの向上に向けては、
毎回清掃状況を患者さんと一緒に確認することを意識した。
BOPは19.9%。上・下顎共に前歯部の舌・口蓋側にプラークの付着が認められ出血が認められる。
また、46のインプラント部の舌側もプラークの付着があり、この2点のセルフケアが今後の課題となった。
初診時より歯肉は引き締まり、健康的なピンク色となりました。
下の3枚のスライドですが、初診時歯間離開していた左上1、2番間が、
咬合調整と歯周組織の改善の結果、適切な位置へ移動したのが分かります。
本症例ではラポールの確立とモチベーションの維持があっても患者の手技によりセルフケアの定着がみられず、
押したり引いたりの継続的な支援が大切であることがわかった。
気を抜くと、セルフケアが疎かになるため、引き続きモチベーションの維持にも努める。
これからも定期的なSPTにより歯周組織の健康を維持出来るよう努め、咬合力にも注意していきたい。